乳腺と向き合う日々に

2023.09.30

乳腺痛について・・・その2

痛み

なぜ乳腺が痛むのですか?にこたえるために、まず痛みそのものについての知識が必要になると思います。遠回しになりますが、お付き合いください。

そもそも我々が痛みを感じるとき、痛みの情報を作り出し、それを脳にまで届けてくれるのは“神経”です。神経には大きく運動神経と感覚神経がありますが、痛みを伝えるのは後者の感覚神経です。

神経細胞はどのようにしてその痛みを感知し、それを脳に伝えるのでしょうか?

タイトルなし

上記は神経細胞のイラストです。一つ目一本足の火星人みたいですね。

この神経細胞の長い脚や根っこの部分に“引っ張り力”が働いた時、信号が発生します。

強い力で急激に引き延ばされた時、信号が送られ、それを脳が処理して痛みを感じるのです。

でもゆっくり引っ張られると信号は出ません。たとえば身長が伸びれば神経も一緒に延ばされていくはずですが、痛みは感じません。もっと典型的なのは妊娠ですが、あれだけお腹の皮が延ばされているのに痛みません。

急に引き延ばされた時に信号を出します。それはしかし病気とは限りません。痛み=病気ではないのです。その痛みが病気なのか、けがなのか、何かが当たっているだけなのか、それを判断するのは脳の働きです。痛みがある、その情報だけだと脳は原因を判断できません。ですので乳腺痛があると「がんではないか」という不安の元になります。

スペース

乳腺について

この図は乳腺を臓器としてとらえて図に起こしたものです。

乳腺の内部に脂肪で包まれたミルクを作る袋が存在しています。そしてそこから流れ出る老廃物を受け取るリンパ管、リンパ節が緑色で示されています。

乳腺スケッチ

痛みを伝える感覚神経はこうした臓器の間にくまなく存在しています、その神経は、乳腺から流れ出るリンパ管の周辺にも非常に多く分布しています。

このミルクを作る袋は生理の周期によってダイナミックに変化します。

まず第二次性徴で乳腺が大きく発達するとき、こうした変化はゆっくりです。ゆっくり引き延ばされるときには神経はあまり信号を出しません。

乳腺は生理前には硬く張っていますし、生理が終われば柔らかくなります。

これは短い期間での変化で1か月、それも生理前後の数日で大きく変化します。代謝によって壊されたり、吸収されたりした老廃物は生理前後には大量にリンパ管に流れ込むことでしょう。これらの変化は急激です。だから痛みます。しかしぶつけたり、切れたりした痛みほどの強い痛みにはなりません。

痛みを5段階に分けて考えると、生理前後で経験される乳腺の痛みは1-2です。これは乳腺が完成し、しかし授乳経験がない20歳前後にピークになります。時に3を超えるでしょう。そして何度か授乳を経験すると乳腺は張りを失い、少しずつ柔らかくなっていきます。そうすれば生理前後の痛みは改善します。授乳経験がなくても、40歳近くになればホルモン分泌が落ちてくるので、やはり痛みは改善します。ただ当然授乳経験がなければ痛みは後年まで長引く傾向があります。

何かにぶつかった、乳腺に何かが落ちてきた、そんな痛みは3-4でしょう。

授乳中に乳腺が張ってきた。1-2でしょう。子供が吸ってくれなくて、乳腺が張って痛む。3を超えるでしょう。

細菌感染を伴って化膿性乳腺炎になった、4以上になります。