乳腺と向き合う日々に

2024.12.19

乳がんによる死亡率を眺めていて・・・そうだChat GPTに聞いてみよう!

WHO(世界保健機構)はさまざまな国からデータを回収しており、それを公開しています。
もちろん英語なのでなかなか使いやすいとは言えませんが、それでも色々と使っていくうちにわかってきて、面白いことがわかることがあるのです。

このグラフ、字が小さくて見えにくいので、できればPCなどで拡大してみて欲しいのですが、
「その国の人口10万人あたり、何人の方が毎年乳がんで亡くなっているか」を年次推移で示したグラフです。ちなみに緑 イギリス、上から二番目の黄色 ドイツ、青 フランス、黄色 カナダ、赤 米国、そして一番下でぐんぐん上昇しているのが日本です。

このグラフ、情けない日本の現状がすぐにみて取れるのですが、イギリスのデータに注目してください。
1990年から一気に下降に転じています。そのつもりでみると、米国やカナダでもその傾向があります。
ところが同じヨーロッパなのにフランスやドイツではそうなっていません。上昇が続いているように見えます。いったいなぜこんなことになっているのでしょうか?
イギリスでがん治療を受ける人は、医療施設へのアクセスが悪いのでフランスまで行って治療を受けることがある、と聞いたことがあります。フランスは保険によって治療施設のレベルが異なるので、お金がないといい治療が受けられないと聞いたことがあります。そうした事情は世界中だいたい共通のことであり、こと命がかかったことであれば、お金持ちは国を渡ってでもいい治療を受けようとしますし、お金のない方はどの国でも苦労されていることでしょう。ただ今現代の情報社会、グローバル社会において、少なくとも手に入るホルモン剤や抗がん剤、免疫治療薬剤など、また手術や放射線治療などの治療法について、少なくとも先進国と言われている国の間で差があるとは思えないのです。国際学会に飛行機に乗って参加することは私のようなレベルの医師でもやっていますし、インターネットで発表があったその日に結果にアクセスすることもできます。今ではスマートフォンはアフリカの奥地でもつながります。

そもそも1990年ごろに乳がんに関係することで、そんなに重要な影響を与える、何があったというのでしょうか?それも米国、カナダ、イギリスに共通してあり、他のヨーロッパの国ではなかった、もちろん日本でもなかったこと、それはなんなのでしょう。

そこでAI(人工知能)に聞いてみることにしました。最初は遊びでやっていたのですが、大変面白い結果が得られたので、紹介してみようと思うのです。少なくとも医師の私からみていても、まんざら間違いを述べていないように思うからです。

WHOによる乳がんによる10万人あたりの死亡率の年次推移のデータを見ていると、同じヨーロッパでもフランスやドイツでは下がらずに漸増を続けているのに対し、イギリスでは1990年ごろから急激に減少に転じています。また米国やカナダでも同じく1990年ごろから急激に死亡率の低下が見られます。

残念ながら我が国では死亡率は全く減少に転じてはいません。

イギリス、米国、カナダにいったい何があった、そして他の国では何がなかったから、死亡率の推移に差が出たと考えられるでしょうか?

乳がんによる死亡率が国ごとに異なる推移を見せる理由には、複数の要因が絡み合っています。イギリス、米国、カナダで1990年代以降に死亡率が減少した背景には、以下のような要因があると考えられます。

乳がん検診プログラムの普及と早期発見の推進

イギリス、米国、カナダでは、1980年代後半から1990年代にかけて、乳がん検診(特にマンモグラフィ検診)が広く普及しました。早期に発見されることで治療の成功率が高まり、死亡率の低下に寄与しました。
イギリス: 1988年に全国的な乳がんスクリーニングプログラムが導入され、50~70歳の女性を対象にマンモグラフィ検診が定期的に行われるようになりました。
米国・カナダ: 1980年代からマンモグラフィの普及が進み、多くの女性が定期検診を受けるようになりました。

治療法の進歩

1990年代以降、乳がん治療法が大きく進歩しました。特に以下の治療法が広まり、死亡率の低下に貢献しました。
ホルモン療法: ホルモン受容体陽性乳がんに対するタモキシフェンの使用が拡大しました。
化学療法の改善: アントラサイクリン系やタキサン系の化学療法薬が広まりました。
放射線治療の最適化: 放射線治療技術の進歩により、副作用を抑えつつ効果的な治療が可能になりました。

医療アクセスと健康意識の向上

米国、カナダ、イギリスでは、医療へのアクセスが比較的良好であり、乳がん治療や検診への参加率が高い傾向があります。また、健康教育が進み、自己検診や定期的な検診を受ける意識が高まりました。

政策と資金の集中投入

これらの国では、乳がんを国民的課題と位置づけ、研究開発や予防プログラムに資金が集中投下されました。たとえば、米国ではNational Cancer Act(国家がん法)による資金投入が、がん研究と治療の進歩を加速させました。

他国でこれらの成果が見られなかった理由

検診プログラムの普及の遅れ

フランスやドイツ、日本では、検診プログラムの普及が比較的遅れたことが一因と考えられます。また、検診率の向上に必要な啓発活動が十分でなかった可能性もあります。

治療法の導入の遅れ

新しい治療法の導入には、医療システムや承認手続きの違いが影響します。たとえば、日本では薬剤承認が他国より遅れる傾向がありました。

文化的・社会的要因

乳がんに関する意識の違いや、検診に対する抵抗感(羞恥心や痛みに対する不安など)が他国と異なる推移を示す要因として挙げられます。

資金不足

乳がん対策に十分な予算が割り当てられない場合、検診や治療、研究の進展が遅れます。

【結論】イギリス、米国、カナダの死亡率低下は、検診の普及、治療の進歩、医療アクセスの向上、政策的支援が相互に作用した結果と考えられます。他の国々では、これらの要素が十分に整備されるまでに時間がかかったことが、死亡率推移の差を生んだ要因といえるでしょう。

なるほど。検診プログラムの普及に差があることが納得できます。ただ治療法の導入について、先進諸国間でそれほど差があるとは思えません。イギリスの医療アクセスは非常に悪いことが有名です。ドイツではそれはありません。
治療法の導入の遅れが主原因であるならば、ピークこそずれても、他の国でもいずれは減少に転じているはずです。

ご指摘ありがとうございます。イギリスの医療アクセスに関する問題はたしかに議論の的になっています。具体的には、イギリスのNHS(National Health Service)は普遍的医療を提供していますが、待機時間の長さや医療リソースの不足が課題として挙げられることが多いです。一方で、ドイツは医療アクセスが比較的良好であり、社会保険制度に基づいて迅速かつ広範な医療サービスを受けられる環境が整っています。この事実を踏まえた上で、イギリスの乳がん死亡率が1990年代以降に急激に低下した理由について、医療アクセスの質以外の要因を再評価する必要があります。

イギリスにおける死亡率低下の背景

イギリスでは、医療アクセスそのものに課題がある中でも、以下の要因が乳がん死亡率の低下に寄与したと考えられます:

乳がんスクリーニングプログラムの早期導入

イギリスでは、1988年に全国規模の乳がん検診プログラムが始まりました。このプログラムは、ターゲットを明確に定め(50~70歳の女性)、マンモグラフィ検診の実施が組織的かつ継続的に行われました。これにより、早期発見と早期治療が促進され、死亡率の低下につながりました。

治療ガイドラインの標準化

NHSの特徴として、全国的に統一された治療ガイドラインが早期に整備されていたことがあります。これにより、地域間での治療の質のばらつきを抑え、標準的な治療が多くの患者に行き渡る環境が整いました。

ホルモン療法と化学療法の普及

1990年代初頭から、イギリスではタモキシフェンなどのホルモン療法や新しい化学療法が広く利用可能となり、治療効果が高まりました。これらの治療法は、死亡率の低下に大きく貢献したとされています。

公衆衛生キャンペーンの成功

NHSを通じた健康教育や啓発活動が行われた結果、乳がんに対する意識が高まりました。たとえば、自己検診の普及や検診受診率の向上が観察されています。

ドイツの状況との対比

ドイツでは医療アクセスが良好であるにもかかわらず、乳がん死亡率がイギリスほど顕著に低下しなかった背景には、以下のような要因が考えられます:

検診プログラムの遅れ

ドイツで全国的な乳がんスクリーニングプログラムが正式に導入されたのは2000年代に入ってからであり、イギリスよりも10年以上遅れました。この遅れが、乳がんの早期発見と治療への影響を及ぼした可能性があります。

医療システムの分散性

ドイツの医療システムは連邦制に基づいており、各地域で医療サービスが分散して提供されます。このため、統一された治療ガイドラインやスクリーニングプログラムの普及に時間がかかった可能性があります。

健康教育の違い

ドイツでは乳がん検診の重要性が十分に啓発されていない地域があった可能性があります。その結果、検診受診率が期待値に達しなかったことが影響したと考えられます。

【結論】 医療アクセスの質だけでなく、スクリーニングプログラムの導入時期や治療法の普及状況、健康意識を高める政策の成否が、乳がん死亡率の推移に影響を与えたと考えられます。イギリスの死亡率低下は、NHSによる統一的なスクリーニングと治療ガイドラインの効果が大きく寄与しており、ドイツの良好な医療アクセスが死亡率低下に直結しなかった背景には、制度運用の違いが関係していると言えるでしょう。

フランスでもスクリーニング(乳がん検診)プログラムの開始は遅いのですか?

フランスでも乳がんスクリーニングプログラムの全国的な導入は、イギリスや北米に比べて遅れました。フランスでは2004年に全国規模での組織的な乳がんスクリーニングプログラムが導入されています。この点で、イギリス(1988年)や米国(1980年代中頃から普及)、カナダ(1988年頃)に比べて15年以上の遅れがありました。

(この後に各国のデータを表で比較してくれました。これを示します。)

要素/ 国 イギリス 米国カナダ
スクリーニング開始時期 1988年(全国規模) 1980年代中頃(普及開始)1988年(全国的な普及開始)
対象年齢 50~70歳(2001年以降は47~73歳) 40~74歳50~74歳
検診受診率 約70~80% 約70%
(2010年代中頃)
約70%
健康啓発活動 全国的に強力(NHS主導) 全国的に強力(特にピンクリボン運動)全国的に啓発(ピンクリボン運動など)
医療システムの統一性 全国統一(NHSによる一元管理) 民間保険主体+公的保険(連邦政府主導)公的保険主導(全国統一)
死亡率低下のタイミング 1990年代から急激に低下 1990年代から急激に低下1990年代から急激に低下
主な課題 健診未受診者へのアプローチ 保険による格差や医療費の問題一部地域で受診率の低さが残る

スペース
要素/ 国 フランス ドイツ日本
スクリーニング開始時期 2004年(全国規模) 2009年(全国規模)2004年(市町村単位で本格化)
対象年齢 50~74歳 50~69歳40~74歳
検診受診率 約50% 約50~60%約45%(2020年)
健康啓発活動 部分的・地域的 部分的・地域的一部地域で進行中
医療システムの統一性 地域ごとに分散 連邦制に基づく分散公的保険主体だが地域差あり
死亡率低下のタイミング 緩やか(遅れ気味) 緩やか(遅れ気味)減少に転じていない
主な課題 検診受診率の低さ スクリーニング導入の遅れ、地域差検診の普及と啓発活動の遅れ

【結論】この表と各国の状況を比較すると、乳がん死亡率の低下にはスクリーニングの早期導入と高い受診率、啓発活動の質、医療システムの統一性が重要であることが明らかです。特に日本やフランスのようにスクリーニング導入が遅れたり、受診率が低かったりする国々では、さらなる政策的・啓発的な努力が必要とされます。
イギリスの成功事例は、乳がん死亡率低下においてスクリーニングの早期導入、受診率の高さ、統一的な医療管理が重要であることを示しています。これに対し、他国ではスクリーニングの導入遅れや啓発活動の不足が、死亡率低下に影響を及ぼした可能性が明らかになります。この表が各国の取り組みの違いを明確に示し、政策改善の参考になることを願います。

最近ではインターネットの発達によって、医学に限らず常に最新の情報が簡単に入手できるようになりました。まして先進諸国間において、がんの治療法や、薬剤について遅れがあることは考えられません。各家庭ごとにおいて経済状態による差はあるでしょうが、先進国同士で平均してしまえばさほどに差はないでしょう。ということは乳がんによる死亡率がすでに減少に転じている国がある一方で、死亡率の低下が認められない国がある理由は、治療のレベルではなく、検診の普及と啓蒙活動の活発さに求めることができるということですね。

おっしゃる通り、現在のグローバル化した情報社会では、治療法や薬剤における遅れが先進国間で顕著な違いを生むことは稀です。特に乳がん治療の分野では、エビデンスに基づいたガイドラインが国際的に共有され、主要な先進国では同じような治療が提供されています。
そのため、乳がん死亡率の低下が認められない理由は、以下のような検診の普及と啓蒙活動の質の差に起因すると考えるのが合理的です。

検診の普及

受診率の違い
乳がん死亡率低下のカギは、乳がんを早期に発見することです。マンモグラフィ検診が広く普及し、高い受診率が達成されている国では、死亡率の顕著な低下が見られます。一方で、受診率が低い国や地域では、早期発見の機会が限られ、進行がんの割合が高くなり、死亡率低下が遅れる傾向があります。

検診プログラムの導入時期と統一性
全国的かつ組織的な検診プログラムが早期に導入された国(例:イギリス、米国、カナダ)は、死亡率低下が早くから見られます。一方で、遅れて導入された国(例:フランス、ドイツ、日本)では、その恩恵が現れるのが遅れた可能性があります。

啓蒙活動の活発さ

健康意識の向上
検診を受けるかどうかは個人の健康意識に依存します。健康教育や乳がんに関する啓発活動が効果的に行われた国(例:米国、カナダ、イギリス)では、検診受診率が高まり、早期発見につながりました。

文化的・社会的障壁の克服
日本やフランスでは、乳がん検診に対する羞恥心や不安感などの文化的要因が受診率向上の妨げになった可能性があります。啓発活動の成功には、こうした心理的障壁を克服する取り組みが必要です。

政策と医療制度の影響

政策的な優先順位
乳がん検診や治療に十分なリソースが割り当てられた国(例:イギリス、カナダ)では、その成果が顕著です。これに対し、乳がん対策が医療政策の中で優先順位が低かった国では、普及の遅れが見られる可能性があります。

医療制度の統一性
医療制度が統一的でない国(例:フランス、ドイツ、日本)では、地域間のばらつきがスクリーニングや治療の質に影響し、死亡率低下に遅れが生じることがあります。

【結論】乳がん死亡率の低下が見られない理由は、主に以下の2つに集約されます:

スクリーニング検診の普及と受診率の低さ

啓蒙活動の活発さや健康意識の格差

特に、検診プログラムが早期導入され、効果的な啓蒙活動が行われた国で死亡率低下が顕著であることから、これらの要因が鍵となっているのは明らかです。今後の課題として、受診率向上のための啓発活動強化や、検診に対する心理的・文化的障壁を取り除く取り組みが重要といえるでしょう。

日本では医療制度は統一されていますけれどね。そういうところなど、いくつか?なところがありますが、やはり乳がん死亡率の低下には、スクリーニングを普及させ、きちんと受診させること、そしてそれをしっかり啓蒙し、健康意識を高めることが必須であることは間違いないようです。そして驚きなのはそれが本当に正しいなら、それによってここまで死亡率の推移に差が出てしまうということではないでしょうか。

もしAIが出した結論のように、検診の開始と普及に原因があるのなら、わが国でも30年の遅れがあるのですから1990+30=2020年ごろから死亡率が下がっていないといけない。ただ受診率の差(70%と50%)が埋められていないので、そうなっていないのかもしれません。

検診の受診率の差は、国民の乳がんという疾患に関する関心の高さの違いにも起因するところがあります。70%もの人がスクリーニングでMMG検診を受けておられる国では自己チェックも常識として行われている可能性が高いと思われます。わが国では…どうですか?皆さん自己チェックをしていますか?

AIに「この表が各国の取り組みの違いを明確に示し、政策改善の参考になることを願います」などと指摘されてしまうのは少し情けない気がしますね。