乳腺と向き合う日々に

2024年11月

2024.11.18

アンスラサイクリンとの決別・・・はできるのか? 

この話題は抗がん剤をするかどうか悩んでおられる方の参考に引用しました。どちらかと言えば医師の方が参考にするレベルの論文です。
アンスラサイクリン系の薬剤(アドレアマイシン ファルモルビシン)は毒々しい燃えるようなオレンジ色の液体であることも相まって抗がん剤治療を受けられる方の恐怖のまとでした。題名から、「おっと!もう投与しなくてもよくなったのか?」と思って詳しく読んでみました。
抗がん剤治療を受けられる予定のある方、それ以外の方には専門的すぎて難しいと思います。そのつもりで興味がある方は読んでください。

50 年以上にわたり、アルキル化剤(シクロフォスファミド)、アントラサイクリン(アドレアマイシン、ファルモルビシン)、タキサン(パクリタキセル)を組み込んだレジメンを、多くは3週間に1度、4-6回繰り返して実施する術後補助化学療法により、早期乳がん患者の予後が改善され、再発やがん関連死亡は減少しました。

支持療法と呼ばれる副作用を軽減する処置を加えること、特に制吐剤とステロイドサポートの目覚ましい進歩により、より多くの患者が治療を実行可能かつ耐えられるようになりましたが、神経障害、疲労、体力低下などの長期的なリスクは残っています。特にアントラサイクリンは、まれに心臓障害や骨髄異形成、急性骨髄性白血病を引き起こすことが常に指摘されています。以前はこうした強い副作用をもつ抗がん剤は、乳がん治療に必須とされ、進行した乳がんの患者さんにはほぼ全例に投与されてきました。

こうした術後化学療法の進歩と並行して、ホルモン剤による標的内分泌療法およびハーセプチン🄬を先駆けとする抗ヒト上皮成長因子受容体 2(HER2) 療法が素晴らしい効果を上げたことから、乳がんはたとえばルミナールタイプ、HER2 enrichタイプなど、そのサブタイプによって術後化学療法の必要性が異なることが認識されるようになりました。

Oncotype DX🄬などを用いた腫瘍の遺伝子の解析に基づくと、ステージ I または II の比較的早期のホルモン受容体陽性乳がんの患者(ルミナールタイプ)のほとんどは、化学療法をまったく行わずに効果的に治療できます。しかし早期ステージの HER2 陽性がんの患者は、アントラサイクリンを除いた化学療法とハーセプチン🄬をベースとしたレジメンで非常に良好な結果が得られるため、早期がんであっても抗がん剤は施行されます。トリプルネガティブ乳がん (TNBC) の患者の場合は、最新の知見を基に、現在では標準治療に免疫療法が組み込まれたことから、アントラサイクリン以外のレジメンで十分ではないかという提案が進んでいます。つまり残る疑問は、どの患者のどのがんに対して、あの”きつい”アントラサイクリンをベースとした術後化学療法が、今まで通りに必要なのかということです。

スペース

Jensen先生らは、READ 試験の 10 年結果と晩期毒性を報告しました
Jensen M-B, Balslev E, Knoop AS: Adjuvant docetaxel and cyclophosphamide with or without epirubicin for early breast cancer: Final analysis of the randomized DBCG 07-READ trial. J Clin Oncol 10.1200/JCO.24.00836

この試験では、リンパ節転移が陽性の乳がん患者または再発リスクの高いリンパ節転移は陰性の乳がん患者を対象に、

1 タキサン (ドセタキセル) とシクロホスファミドの 6 サイクル (TC 群、n = 1,011) と、

2 アントラサイクリン (エピルビシン) とシクロホスファミドの 3 サイクルの後にタキサン (ドセタキセル、AC-T 群、n = 1,001) の 3 サイクルのレジメンを比較しました。

(1をTC療法と呼びます。アントラサイクリン系薬剤を使わずに同等の結果が出るよう工夫された抗がん剤治療法です。2は今まで通り、アントラサイクリンを含み、AC-T療法と呼ばれます)

当初の 5 年間の結果として、
無病生存率 (DFS、ハザード比 [HR]、1.00 [95% 信頼区間、0.78 ~ 1.28])、
無遠隔病生存率 (DDFS、HR、1.12 [95% 信頼区間、0.86 ~ 1.47])、
死亡率 (HR、1.15 [95% 信頼区間、0.83 ~ 1.59])  すべてに差は見られませんでした。

しかしAC-T療法を受けた群では、毒性が強く、口内炎、筋肉痛または関節痛、嘔吐、吐き気、および疲労の程度が高かったことがわかりました。

現在、さらに10年の追跡調査が行われました。

そこでは無病生存率と 無遠隔病生存率に差があったと報告しています。
10年無病生存率は、AC-T群で79.0%(95% CI、76.4~81.6)、TC群で75.6%(95% CI、72.9~78.4)でした(HR調整、0.83 [95% CI、0.69~0.99]、P = .04)。AC-T群の方が優れていました
10年累積無遠隔病生存率にも、AC-T群とTC群で有意差があり、AC-T群が優れていました
しかし、死亡率には依然として有意差はなく、10年全生存率(OS)はAC-T群で88.8%、TC群で87.3%でした。

READ 研究は、アントラサイクリンによる心不全および白血病のリスクに関する重要な資料を提供しています。

10 年後の心不全率は、AC-T または TC でそれぞれ 2.1% 対 1.1% でした。高コレステロール血症や肥満など、よく知られている心臓リスク要因は化学療法関連の心不全と関連しており、心筋症の個別リスク推定が可能です。これらの結果は、人口ベースの症例対照研究と一致しており、アントラサイクリンによる心不全や心筋症の 10 年累積発生率は、非アントラサイクリン化学療法レジメンよりも 4.1% 対 2.3%で 高いことが示されています。

Jensen先生らは、AC-T 群の 10 年間の急性骨髄性白血病の発症率 (0.2%) が TC 群の 0.1% と比較して高いことも観察結果として示しました。これは、治療を受けた患者 700 人あたりで1人で急性骨髄性白血病患者が増加することを示しています。

ここまでをまとめると、
アンスラサイクリン系の薬剤は、やはり乳がんの治療成績でみれば効果的な薬剤と言える。しかしそれを考慮しても無視できないレベルで、心疾患や白血病など、命に係わる合併症の発生率を上げてしまう一面がある。

アントラサイクリンの投与には強い副作用を伴うため、慎重を期さなければならない。それはわかっていることです。しかしその際の根強いジレンマは、どういう乳がん症例にアンスラサイクリン系の薬剤が必要なのか、治療選択のための臨床的、病理学的、または生物学的なマーカーが欠如していることです。

現在までに、このREAD 試験も ECBTCG(ヨーロッパの大規模乳がんのデータベース)による大規模なメタアナリシスも、
患者の年齢、腫瘍のステージ、グレード、またはエストロゲン受容体 (ER) や HER2 の状態によってコホートを識別することで、アントラサイクリンを必要とする個人を定義できることを示せていません。

今 可能性が示唆されている潜在的なマーカーは、アントラサイクリンが標的とする酵素タンパクをコードする遺伝子であるTOP2Aです。しかしTOP2Aが正常の腫瘍を持つ患者のみを対象とした READ 試験では、TOP2A の発現の範囲に関係なく、アントラサイクリンの使用の有無で同等の結果が示されました。このようにこれまでの分析では、 TOP2A の過剰発現がアントラサイクリンの利益を予測するとは言えなかったのです。

腫瘍で発生している遺伝子異常の解析はアントラサイクリン治療の指針として研究されていますが、これまでのところ、治療の決定や診療ガイドラインに影響を与えるほど説得力のあるデータは蓄積されていません。

FLEX レジストリと呼ばれる研究では、化学療法を受けている ER 陽性、HER2 陰性のルミナール Bタイプ乳がん患者の転帰を分析しています。
報告によると、MammaPrint🄬検査でHigh 2 ルミナール Bタイプ乳がんの患者は、アントラサイクリン ベースの治療を受けた患者の方が、アントラサイクリン ベースの治療を受けなかった患者よりも 3 年無再発生存率が高いという結果でした (97.7%対86.4%)。
一方、MammaPrint🄬検査でHigh 1 腫瘍の患者では有意差は見られませんでした。

さらに別の研究戦略として、術前補助療法への反応によるリスク層別化があります。つまり術前化学治療をアンスラサイクリン系の薬剤を使わずに施行して、効果があれば、アンスラサイクリン系の薬剤を術後には省略する、なければやはり投与しておく、とする考え方です。
術前化学療法または新規抗体薬物複合体に基づく治療により病理学的完全奏効を達成しており、したがって予後が良好である患者は、アントラサイクリンを省略できる可能性のある候補になります。
しかしこうしたアプローチの臨床結果はまだ得られていません。

2 つ目の大きなジレンマは、アントラサイクリンの利点に関するメタ分析と、米国で大規模かつ適切に実施された試験の結果との間で、治療上の教訓が一致していないことです。

EBCTCG の報告書では、アントラサイクリンベースの治療はすべての患者で再発リスクを低下させ、再発を 2.5% 減少させたようです。この利点は、タキサンベースとアントラサイクリンベースの化学療法を同時に受けた患者でほぼすべて実現されました。しかしアントラサイクリンとタキサン療法を順番に投与した場合には、アントラサイクリンのメリットはごくわずかでした。

対照的に、同時に投与する TAC 療法と、順番に投与する AC→T 療法を比較した NSABP B-38 では、同時アプローチに臨床的利点はなく、同時治療による毒性が増大することが示されました。

一方、ABC 試験では、TC とアントラサイクリンおよびタキサンベースの治療を比較し、アントラサイクリンは総 OS にほとんど影響を与えず、疾患再発の改善は主に ホルモンレセプター陰性癌に限定されていることがわかりました。

まとめ

再発の高危険群である乳癌で、化学治療が必要とされる症例でも、アントラサイクリン系薬剤なしで治療できる症例は確かに存在しています。ただ今の段階ではそういう患者さんをどうやって選び出せばいいか、その方法が見つかっていません。

そしてそのための根拠となるような研究において、残念ながら結果が一致していないこともおおく、そのため、研究が前に進んでもいません。

アントラサイクリン系抗がん剤のメリットを評価する上での最後の課題は、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤をベースとした化学療法の標準的な試験が開始されてから 15 年以上の間に、早期乳がんの他の治療法が達成した進歩です。

つまり以前は化学治療しかなかったので、どんな症例でもできるだけ抗がん剤を投与する方針になっていた。けれども、化学治療以外の治療方法がいろいろと出てきて、成果を上げているので、そもそもとして抗がん剤を必要とする症例自体は限定してきているのです。

用量密度の高い非アントラサイクリン系化学療法または用量強度の高い非アントラサイクリン系化学療法の導入、術前化学療法への反応の程度に基づいたカスタマイズされた治療戦略、抗 HER2 薬、免疫チェックポイント阻害剤、卵巣抑制、CDK4/6 阻害剤の使用により、中等度および高リスクのがんの再発の可能性は著しく低下しており、加えて遺伝子解析により、化学療法の検討が必要なホルモンレセプター陽性 腫瘍の患者がどんどんと絞り込まれました。

これらのアントラサイクリンを使わない治療方法を強化することによって、確実と言える達成された改善は、アントラサイクリンを使うことの臨床的利益が次第に狭まっていることを意味します。

さいごに

2024年の現段階で、アントラサイクリンを本当に必要としているのは誰なのか?

下記表では、化学療法が必要な患者に最適とされる術前、術後化学療法レジメンの概要を示しています。

アントラサイクリンは、ペムブロリズマブ(免疫療法)との併用、あるいは他の化学療法と併用して、ステージIIまたはIIIのTNBCのレジメンの不可欠な要素であり続けています。

SWOG主導のSCARLET臨床試験では、ステージIIまたはIIIのトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、ドセタキセル+カルボプラチンとペムブロリズマブ(免疫療法)の6サイクルからなるアントラサイクリンを含まない術前化学免疫療法レジメンと、パクリタキセル/カルボプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミドとペムブロリズマブの併用を比較しています。

アントラサイクリンは、抗HER2抗体治療と組み合わせた非アントラサイクリン化学療法の有効性によって不要となり、またアントラサイクリンをトラスツズマブと併用した場合の心毒性の懸念によって、HER2陽性腫瘍に対する化学療法レジメンから排除されました。

遺伝子解析によってリスクが高いとされたホルモンレセプター陽性腫瘍および低ステージのトリプルネガティブ癌の患者に対するアントラサイクリンの役割については、現在も議論が続いています。

解剖学的ステージ II または III の癌、つまりトリプルネガティブまたは ホルモンレセプター陽性の腫瘍で、内分泌感受性が低い、ルミナール Bタイプである、高リスク遺伝子解析スコアの場合、アントラサイクリンは明らかにメリットを示しており、転帰を改善します。

しかし、癌の進行度が低く、非アントラサイクリンベースの選択肢による再発リスクが本質的に低い患者の場合、アントラサイクリンによる純粋な改善はせいぜいわずかであり、私たちの推定では、アントラサイクリンを省略する方が有利です。

腫瘍サブセットステージIステージ II、臨床的にリンパ節陰性ステージII、リンパ節陽性またはそれ以上の生物学的リスク、またはステージIII
ER陽性、HER2陰性TCTCAC/T
トリプルネガティブTC または AC/TペムブロリズマブとTCb/AC(術前補助療法)
またはAC/T±Cb(術後補助療法)
HER2陽性THTCHP(術前補助療法が望ましい)

アントラサイクリン系薬剤はかつて乳がん治療の最先端でした。世界中で、特に新しい、一般的にはより高価な治療法へのアクセスが少ない国々では、優れたがん治療の基盤として今も使われています。適切な支持療法を行えば、ほとんどの患者にとって耐えられる治療法であり、測定可能な晩期副作用はありますが、幸いにもまれです。しかし、アントラサイクリン系化学療法の時代は終わりつつあります。他の治療オプションの漸進的な改善と、化学療法の適応を判断するためのバイオマーカーの使用により、アントラサイクリン系薬剤が早期乳がんの多くの患者に意味のある利益をもたらす可能性は減少しています。アントラサイクリン系治療の燃える赤い悪魔は明らかにその頂点を過ぎ、長いお別れの時を迎えています。

2024.11.14

乳がん手術後の放射線治療 

乳がんで部分切除手術を受けられた後、残存している乳腺に放射線治療を受けられた方はおられると思います。以前は2Gyずつ25回、だから合計50Gyになるように5週間かかっていました。Gyというのは1回あたりに照射する線量のことです。最近ではこれを寡(=回数が少ない)分割照射といって2.66Gyずつ16回、42.56Gy当てるという方法が主流になっています。

基本的にがん細胞を殺す効果は線量に依存しています。つまりたくさん当てないとがん細胞は死なないか、生き残ってしまう。だからある程度の量は当てないといけない。

そしてもう一つは間をあけて少しずつ当てるよりも、短い期間でどっと大量の線量を当てた方が効果は高くなります。だから短い期間で当てた方が総量で見たら少なくなっているのです。

この二つの方法は全く効果に差がないことがわかっており、同時に副作用にも差がありません。なので現在の標準治療は5週間よりも3週間で終了できる寡分割照射に移行しつつあります。

ただこの方法にはまだ未解決の問題がありました。

乳がん術後の放射線治療の目的は大きく二つあります。温存術後の残った乳腺内に残存しているかもしれないがん細胞を絶滅させる、そしてもう一つは腋窩や乳腺周辺のリンパ節にもしかしたら転移しているかもしれない小さながん細胞を絶滅させる、です。
乳腺に当てる放射線治療は寡分割照射で問題ないことがわかっていたのですが、リンパ節を標的にする場合には腋窩(わきの下)や、鎖骨の周辺から頸部(首周辺)まで放射線を当てないといけません。

以前からこうした場合には、治療後に上腕のリンパ浮腫の副作用が発生することがわかっていました。

このリンパ浮腫はなかなか厄介で、程度の差こそあるのですが、ほぼ3割近い方に発生することがわかっています。これって結構高いですよね。
リンパの流れはたくさんあって、どこかが損傷しても他を流れる。けれどもがんの治療だからその流れをできるだけ残さずたたこうとする。そしてリンパの流れがほぼ半永久的に破壊されて発症することから、いったん発症するとなかなか治癒させる方法がないことがわかっています。リンパ管の吻合手術やリンパマッサージで対応するのですが、一過性だったり、現状維持で精いっぱいだったりしてなかなか対応が難しい。胃の手術の後の摂食障害、甲状腺術後の嗄声、などと同様に仕方のない後遺症と考えられています。

スペース

今年、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2024で発表されたデータによると、乳がん患者のリンパ節領域を照射する場合、3週間の寡分割放射線療法は、通常の5週間分割に劣らないことが判明しました。HypoG-01と名付けられた試験の5年間の結果で、両方のレジメンで腕のリンパ浮腫の累積発生率が約33%であることが示され、差がないことが明らかになっています。これによって、寡分割照射ではなく、通常の分割照射を行う理由がなくなりました。今後はリンパ節照射を必要とする乳がん患者のすべてで標準治療が変化する可能性があります。

研究デザイン

HypoG-01 試験には、2016 年 9 月から 2020 年 3 月までの間にフランスの 29 施設で 1,265 人の患者が登録されました。対象患者は、リンパ節照射を必要とする乳がん患者でした(末期がんを除くほぼすべての乳がん患者さん)。参加者は、追加照射(部分的に10Gyの放射線治療を追加する必要がある方がおられる)の有無にかかわらず、3 週間にわたる寡分割放射線療法または 5 週間にわたる通常の分割放射線療法のいずれかを受けるように 無作為に1:1 で無作為に割り当てられました。

研究デザインには主要評価項目として、治療後 3 年間での腕のリンパ浮腫の累積発生率を調査しています。
副次評価項目には、全生存率、局所領域無再発生存率、遠隔無再発生存率、乳がん特異的生存率、および肩関節可動域障害が含まれていました。プロトコルに準拠した集団は、低分割群の患者 562 人と標準分割群の患者 551 人で構成されていました。

結果

腕のリンパ浮腫に関して寡分割放射線療法でも腕のリンパ浮腫の発生頻度には差がありませんでした。
両試験群の 5 年間の累積発生率は約 33%と同じでした。乳がんの生存率そのものへの有害な影響もまた観察されず、むしろ乳がんに限定した場合の生存率(つまり乳がん以外の原因で亡くなった方を除いた生存率)と全生存率では改善の傾向が見られるとこの研究を行ったリベラ医師は述べました (ハザード比はそれぞれ 0.53 と 0.59)。

有害事象の発生率も治療群間で同様で、グレード 3(重症の) 以上の有害事象は約 12.6% でした。肩関節可動域障害は両試験群で約 20% の患者に発生し、同程度でした。

「両腕とも、腕のリンパ浮腫と肩の可動域障害の累積発生率(月日を経るごとに発生し、それが治らないので累積していく率)は依然として高く、今後の戦略ではこれらの副作用を減らすことに引き続き重点を置く必要があることが浮き彫りになっています」とリベラ医師は述べました。

今後

HypoG-01 試験の招待討論者で、英国ケンブリッジ大学の乳がん臨床腫瘍学教授であるCharlotte E. Coles 医学博士 (FRCR) は、リンパ節照射を含む乳がんに対する低分割放射線療法を支持する確固たる証拠が現在もう確立していることを強調しました。コールズ医師は HypoG-01 の研究者らの意見に同意し、「5 週間のリンパ節放射線療法はもはや適応ではなく、3 週間のリンパ節放射線療法が国際標準治療である」と主張しました。

少分割放射線治療の利点

コールズ博士によると、この変化は実践上の大きな変化であり、世界中の患者に利益をもたらす可能性があるとのことです。彼女は、寡分割放射線療法のいくつかの利点を強調しました。

有効性:従来の分割法と同等の腫瘍制御

安全性:長期治療に比べて毒性が軽減または同等

患者中心:治療の負担を軽減し、患者がより早く通常の生活に戻れるようになる

医療システムのメリット:コストを削減することにより、たくさんの方を治療できるようになる

世界的な公平性:特に医療に回せる資源が限られている環境での放射線治療へのアクセスを改善します