2021.04.21
“2004年2月3日 私はステージ3Cの進行した乳がんの診断を受けました(乳がんのステージは1→2A→2B→3A→3B→ 3C→4(末期)と進行します)、しかしその6週間前、私はマンモグラフィ検査を受け、正常との診断を受けていました。ステージ3Cの乳がん女性が5年後に生存できる可能性は48%以下です。" – Nancy M. Cappello, Ph. D.
ちなみにPh.,D.は医学博士の略です。ナンシーさんはドクターだったのです。そして毎年きちんとマンモグラフィによる検診を受けていました。そして正常と診断されたそのわずか6週間後、末期寸前まで進行している乳がんである、と診断されたのです。日本でもある芸能人の方が同じような経験を告白し、大きな話題になりました。
これを聞いて多くの方は、“がんの見落としだ”“とんでもないミスだ”と思われるでしょう。ただナンシーさんは医師なので、なぜ自分の乳がんは正しく診断されなかったのか、調べようと思い立ちました。自分と同じような悲劇を他の誰にも体験してもらいたくなかったからです。そして自分の乳腺が“Dense=高濃度”だったからなのだ、という結論にたどり着いたのです。
彼女は問いかけます。貴方の乳腺は高濃度ではないですか?そのことを知らないで検診を受けて正常と診断されても、正しく診断されていない可能性があるのです、と。
高濃度乳腺とはどんな乳腺なのでしょうか?
下の写真を見てください。左が高濃度乳腺、右が乳腺散在となります。個人ごとに乳腺は全く異なることがわかると思います。両方の乳腺とも正常と診断されました。
マンモグラフィにおける乳腺の所見は、がんが存在している、していないを診断する前に、その乳腺の“濃度”によって脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度乳腺、の4つに分類されます。米国ではそれぞれ 「ほぼすべてが脂肪に置き換わっている」、「線維状に委縮した乳腺が散在している」、「乳腺がまだらに濃く存在し、小さな腫瘍は覆い隠してしまう」、「乳腺が極端に高濃度で、マンモグラフィではがんの発見が困難である」、と分類されています。つまりがんの有無を診断する前に、その乳腺がマンモグラフィで検診するのが適切か否か、判断することになっているのです。

ナンシーさんの調査結果をそのまま引用します。
事実1. 乳腺の濃度が高いことは、マンモグラフィ検診でがんを見落とす最大の原因の一つです。
事実2. 閉経前女性の2/3、閉経後女性の1/4は高濃度乳腺です(米国のデータであり、日本ではさらに高い頻度であると考えられています。)
彼女の乳腺は高濃度乳腺に分類されていました。そして彼女はそのことを知らされていませんでした。先のページの2枚の写真で左が高濃度乳腺、そして右が乳腺散在と分類される乳腺です。この2枚とも正常と診断されています。ここで覚えておいて欲しいことは、乳ガンも、乳腺組織が凝り固まったような組織なので、“ 乳腺と同じがより白く見える”ということです。つまり、高濃度乳腺や不均一高濃度乳腺では正常な乳腺がもともと画面を白く覆っているため、同じく白い乳ガンが見つけにくくなります。
下にある2枚の写真を見ていただければ、乳腺の濃度が腫瘍を見つける際にいかに影響するか、わかっていただけると思います。乳腺散在であれば、乳がんの白い”かたまり”は誰が見ても明瞭です。左の高濃度乳腺では、しかしとても見えづらいことがわかります。
事実3. より感度の高い検査をマンモグラフィと併用することで、乳がんをより小さく、そしてリンパ節転移のない早期で発見できる可能性が明らかに高くなります。
実際 ナンシーさんは超音波検査で乳がんを指摘されています。超音波検査は、胎児の検査に使われることで分かるように、放射線の被ばくもなく、体に害のない安全な検査です。ただ高濃度乳腺だから、マンモグラフィを辞めて、超音波検査だけで検診を受けようとすることもまた危険です。マンモグラフィでは、小さな石灰化(カルシウムの固まり)も重要な所見ですが、これは比較的高濃度乳腺でも捕まえることができます。逆に超音波検査では小さな石灰化を見つけることが困難です。
また白い固まりを作らず、マンモグラフィではもともとわかりにくい小葉ガンのような特殊な乳がんもあります。ですので、自分は脂肪性乳腺なのでマンモグラフィで異常がなければ安心だ、も早計です。
そして不均一高濃度乳腺であっても、マンモグラフィを撮影する際に、しっかり乳腺を ” つぶして ” 薄くして写真を撮ることで、よく見えるようにすることができます。またそのことによって放射線の量を減らすことができ、被ばく量を減らすことにつながります。これはほぼ毎年、そして一生受けなければならない乳癌の検診においては非常に重要なことです。
これらのことから、自分の乳腺は4つのどれに分類されるかを知り、どのように検診を受けていけばよいのか、専門の医師としっかり話し合っておくことが重要だ、とナンシーさんは述べています。
ナンシーさんは一生をかけて、この問題に取り組み、様々な教訓を残しました。いくつか抜粋します。
事実4. 米国の研究結果によれば、高濃度乳腺を持つ女性は、同時に乳癌にり患しやすい方でもある。(これは考えてみれば当たり前です。純粋に乳腺としての量が高濃度であるほど多いからです。)
事実5. 脂肪性乳腺にできる乳がんの98%がマンモグラフィで見つけることができるのに対し、高濃度乳腺では48%しか指摘できない。
事実7. 高濃度乳腺の乳がん患者は、低濃度乳腺の乳がん患者と比較して、4倍も再発しやすい。
事実10. (これはナンシーさんの皮肉が少しこもっているように思います。)自身の乳腺濃度を知らない本当にたくさんの女性が、検診で異常なしとの診断を受けて、よかったと胸をなでおろしている、のちに進行ガンと診断されるリスクをしらないまま。
(参考にさせていただいたこれらの記事はすべて英語ではありますが、https://www.areyoudense.org/ にあります。)
繰り返しになりますが、高濃度乳腺と診断された方が、 マンモグラフィ以外の検査との併用を考えられる際には、まず乳腺の専門医に相談してください。実際には、3Dマンモグラフィ、乳腺超音波検査(ハンディタイプのプローブを用いるもの、乳腺全体を一度に検査するもの)、造影剤を用いたMRI検査、PET-Mと呼ばれる乳腺に特化したPET検査、など、放射線を使うもの、使わないもの、造影剤を使うもの、使わないもの、などマンモグラフィ以外の検査は多岐にわたります。そしてそれぞれメリットデメリットがあります。そしてその検査を併用し、かつどれくらいの頻度で受けておくべきか、もまた専門医の判断が必要です。
一度 マンモグラフィ検査を受けた施設で相談に応じてもらっておくことが一番大切なことなのです。

2021.04.20
「先生にはまだまだ姫路赤十字病院で手術を頑張ってもらって、もっともっとたくさんの人を救ってほしかった、そう思ってさみしがっている患者さんは私だけではないと思う」
今日いただいた言葉です。私以外の外科医もみんなその道は通ったでしょう。
本当はもっと後に、今まで姫路赤十字病院で担当させていただいた患者さんに向けてのコラムを書くつもりでした。これからの抱負も大事だけれども、これまで担当させていただいた患者さんへ、今回のことを私の言葉で伝えておくことも大切なことと考え、今ここで書いていこうと思いました。
乳がんの患者さんとの付き合いは、私が医者になりたての頃には術後5年とされていました。現在は10年どころか、その患者さんの治癒後の検診まで含めると、その方が、そして私が元気でいてくださる限り、ずっと続いていきます。がんを克服し、元通りの生活に復帰され、元気なってくださった患者さんとお会いすることにどんなストレスがあるでしょう。それが自分の仕事になるのなら、毎日、そして一日中でも楽しく働いていられるでしょう。
私はこの播州地区のがん拠点病院に赴任して10年間と数か月、平均すると年に300人近くの新しい患者さんと向き合ってきました。一人残らず、元気になっていただきたかったですが、残念な経過をたどられた方もおられます。それでもその方の命の続く限り、外来に来てくださって、10年でほぼ3000人を越える患者さんを担当させていただきました。
姫路赤十字病院では、病状の重い方、化学治療が必要な方、監視が必要な方を私の外来に残し、それ以外の元気で治癒が望める患者さんは年1回の外来を残して、できるだけ地域の病院に帰っていただきました。そしてそれでもカバーしきれない患者さんは、この、にしはら乳腺クリニックに姫路赤十字病院がお休みの土曜日に来させていただき、外来診察させていただいてきました。術後すぐの方を1年に1度の外来でフォローできたのはそのことあってのことです。
現在保険診療では3か月分がお薬の処方の限界になります。たしかにたとえば6か月分もの薬を診察なしで処方することは無責任でしょう。そのため、3か月に1度、年に4回、お薬のある方は必ず外来受診が必要になります。3000人の患者さんすべてではありませんが、その半分で通院が必要としても、年4回だとのべ6000人を土曜日に診察させていただかないといけません。年52週に土曜日は52回、全部で外来をしても1日に100人以上の診察が必要になります。最近の2年は3か月では回しきれず、3か月と1週とか、2週間で来ていただくことが増え、薬が足らなかった、と叱られることが増えてきました。恥ずかしいのですが、患者さんは長期間薬を飲用されていると、よく飲み忘れて、少しずつ薬が余っていきます。それを逆手にとって3か月より長い期間で回していたのです。正しく飲んでいただいている方に限って迷惑をかけるという本末転倒を起こし始めていました。それはとてもつらいことでした。
姫路赤十字病院の外来はしかし元気になられた患者さんを診療する余裕は全くありませんでした。まず当たり前のこととして、平均して週に8から10人の新しい乳がん患者さんが来られます。そのことへの対応は当たり前のことです。
乳がんでは、再発や、進行して治癒が望めなくなったとしても、薬物治療の進歩により個人差はありますが数年の延命が期待できます。初診時に末期がんと診断され、手術すらできなかった患者さんを、化学治療だけで10年以上頑張っていただけた例もめずらしくありません。20年前の論文であっても、乳がんは再発後3年9か月の余命が望めるとされていました。現在ではおそらく5年を超えているのではないでしょうか。
こうした患者さんのほとんどが最低でも月1回、化学治療であればほぼ毎週の外来通院が必要です。乳腺科では内科外科が分かれていないため、診断から、検査、そして手術、抗がん剤など薬物治療まで、すべて外科医が担当することになります。
乳がん患者さんのうち残念ながら2割弱の患者さんが今でも再発されます。単純に計算すれば5年分1500人のうち、300人の方が残念ながら再発や、転移などの理由で、月1回、多ければ毎週の通院を余儀なくされています。
患者さんにとって、精神的、社会的、そして経済的にも負担が重く、長くつらい期間です。私たちもそれに向き合っていきます。ただ病状の重い300人の患者さんを週2回の外来で診療していかなければなりません。これもまたすでに限界になっていました。
手術についても同様です。これ以上数の話はやめます。ただ手術は経験が重要であることは論を待ちませんが、体力、そして持続力もまた重要です。私は辰年生まれです。年齢は計算してください。そして皆さんがご自身の眼が何歳まで現役だったか思い出していただきたいと思います。もちろん私もまだ見えます。ただ眼の事情もあわせて、自分のベストだと言い切れるパフォーマンスは40代後半でした。50歳からは自分と戦ってはじめて100点が出せるところまで体力が落ちていました。これもまた限界が近づいていることを認めざるをえない。手術に失敗はあり得ません。100点以外ないのです。不合格など可能性ですら許されません。命がかかっているのですから
限界まで頑張って、もうダメとなったら潔くスパッとやめる、そういう考えの外科医もいるかもしれません。それ以降は山にこもって畑をして暮らせるならいいでしょう。しかしそれをすればある日突然主治医がいなくなる患者さんがいることになります。再発や転移で苦しんでいる方が突然放り出されることになる。まして私がしたようにどこかで医師を続けながら、これからはこちらの患者さんを“責任もって”診ていきます、は矛盾しすぎていて誰も信じないでしょう。
医者は転勤族なので、私も今までの人生でそれをせざるを得なかったことが何度かありました。そのたび、患者さんを裏切り、放り出し、無責任なことをしてきた、と言われても仕方がないと思います。ただ今回は自分の意思と、自分の医者としての事情がすべてです。ほかに責任を持っていくことはできない。
わたしはそこで少しずつ立場を変えていく方法を考えました。このまま姫路赤十字病院で部長職を続ける限り、立場を変えられないので、新しい患者さんは増え続けます。病状が進んだ状態で救急性のある方も持たないといけません。その立場からは退職しました。
そして佐藤先生のご厚意で、週1回の外来と、手術日を残していただき、自分がいままで診させていただいていた病状が予断を許さない患者さん、そして手術も私の経験が必要な患者さんのための日を残していただきました。二足の草鞋にみえますが、けっしてそうではないのです。いままでの患者さんを姫路赤十字病院が許してくださる限り、そして患者さんに必要とされる限りは見させていただきつつ、徐々に地域の患者さんの検診へとシフトしていく、それが私の計画です。いままでの患者さんをできるだけ裏切らず、そして自分の持っている経験や知識をまだまだ生かせる検診や、地域の住民に寄り添う身近な施設での診療に軸足を移していこう、そこで自分の人生と使命をまっとうする、そう決めたのです。
移行には何年もかかるかもしれません。ただ私から無理やり移行するのではなく、新しく何かがなければ次第に必要とされなくなるでしょう、そうしてそこから自然に引きながら、これからの自分であってもその力が生かせる分野に軸足を移していく、そうしよう、と決めました。
この4月から、土曜日以外にも自分の外来患者さんたちを診させていただけるようになり、私のせいでわかっていながら薬が足らなくなる心配はさせなくてもよくなりました(とはいえ計算を間違ったらごめんなさい)。パンクしてしまう心配はありません。改めていままでどおりこれからも診させてください。
姫路赤十字病院では、私のところに来られる方はすでにがんの宣告は済んでいる方がほとんどでした。これからは私ががんを見つけて宣告する立場になります。改めてその難しさを痛感しています。
私は外科医として、乳腺の専門医として、腕を磨き、知識を増やすことを努力してきましたが、末期状態まで進行した患者さんはどうしても救えませんでした。逆にステージ0や1で見つかっていれば、最前線の治療も、原則抗がん剤による苦しみも必要ありません。特別な医師も、技術も、施設も必要ではないのです。これからは進行して見つかる方を少しでも減らしていけるよう、早期発見を増やしていくよう地域の方のそばで啓蒙もしていけるでしょう。
それぞれの人生において、それぞれの器と年齢において、医療に最大限の貢献をしていきたい、その気持ちには変わりはないつもりです。
長文になりましたが、またお会いできる日を楽しみに、ここで終わりたいと思います。
油彩 パネル F8
「白い花 神戸植物園」
名前も知らない花なのですが、美しい花でした。珍しい花だったと記憶しています。わざわざ「今 〇〇が咲いています!」と書いてあったような。また詳しい人がおられたら教えてください。
→「オオヤマレンゲ」という木の花なんだそうです。森の貴婦人と呼ばれています。教えていただきました。
2021年4月からにしはら乳腺クリニックにて院長に就任しました。
ここでは乳腺診療に関する様々な最新の知見や、自分の経験を生かしたみなさまに役立つ知識を少しずつ紹介していければと考えています。
今回はその最初として、検診が中心のクリニックの最前線に立つにあたっての抱負を書いていきたいと考えています。
11人に1人が発症すると言われている「乳がん」。検診を受けたときにはステージが進んでいたということもあります。乳がんの発症を防ぐためには、いうまでもなく検診で早期にがんを発見し、治療を始めることが大切です。私は「正しく検診を受けよう」と主張しています。
姫路赤十字病院では乳腺外科部長を10年務め、外科医として手術を中心に治療に携わってきました。手術は〝治す〞が最高の目標です。「乳がん」が、胃がんや大腸がんなど他のがんと大きく異なる特徴は、ただ治癒だけを目的にするのではなく、全摘よりも温存、温存であればできるだけ小さな切除と、整容面への配慮が必要になることです。女性にとって自分の乳房を失うことは、今後の人生に大きく影響します。温泉に入れない、バランスが悪いと不自由さを感じる人も多くいます。 全摘という決断をしなければならない人には、人工乳房(インプラント)で行う「乳房再建」に注力し、いかに今あるものを壊さないように治すのかを大切にしていました。ただ、手術の技術にも限界があり、できるだけ早期で発見することが整容面の保持にも直結します。
とはいえ、たとえ検診を毎年受けておられても、がん宣告をうけたら不安になるのは当たり前です。整容性などどうでもいい、まずは命だ、それは当然です。しかし国が発表した2010-11年の最新データによれば、乳がんと診断された方が5年後に生存されている確率は実測で87.9%、理論上92.2%に上ります。そこで私が疾患患者にまず伝えることは、「毎年検診を受けている人が死亡するのであれば、生存率が90%になるはずがない」ということです。しっかりした検診を受け、早期発見できれば、治せるのが乳がんです。多くの女性が検診を受けて早期発見できると、末期患者が減り、一気に助かる人が増えます。「検診を受けたい」と思ったときに、正しく検診を受けられる環境を整えることが大切です。
下のグラフを見てください。私がいた姫路赤十字病院のデータです。検診で発見されて来院された方はその8割がステージ0-1の早期がんでした。ところが自分で触って見つけて来られた人はそれが4割まで下がってしまいます。
ちなみにステージIの治療成績は98%、ステージ0ではほほ100%です。つまり乳がんは早期発見されていれば心配しなくてもよい、治癒する病気である、と言い切ってもよい。もっと言えばもし全員がステージ0-1で発見されるようになれば乳がんは克服されます。まずはがんの全てが検診で発見されるようになること。しかしそれでも2割の方が残ります。なぜ検診をうけていたのに進行してがんが見つかったのか?そこに正しく検診をうけなければならない、とする意味が隠れています。
正しい検診とはどんなものでしょうか?今後の検診では、自分自身が乳がんになりやすいのか分かる「遺伝子検査」が検診を進化させていくでしょう。現在でも一定の条件を満たせば遺伝子検査は保険適応です。日本人乳がん患者さんの3-5%がこの遺伝子を有していると考えられています。一般女性の乳癌発症率は9%ですが、この遺伝子が陽性の方では41~90%がその生涯で乳癌を発症し、その差6~12倍です。行政が配布しているクーポンは2年に1度ですが、遺伝的にリスクの高い方も一般の方も統一です。お判りいただけると思うのですが、その方その方のリスクに応じて検診の形も変わるべきなのです。ちなみにこうした遺伝的なリスクは乳癌だけではありません。一部の膵がん、男性の前立腺がんも無縁ではありません。そして乳がんの遺伝子もいま検査が可能なものだけではありません。遺伝子の解析が進めば、おそらくすべての人が何らかのリスクを負っていることが明らかになるでしょう。ただ乳がんの研究が最前線にあるというだけなのです。私の言う正しい検診とは、まずは対象の人がもれなく検診を受けられる環境を整えることの先にあります。その方のリスクに応じて変化する個別化検診がそのゴールなのです。
遺伝子だけではありません。以前から、若い方や授乳経験のない方では高濃度乳腺と言って、乳腺のX線の透過性が低く、マンモグラフィのみでは検診の精度が低いことが指摘されていました。こういう方では超音波検査や、場合によってはMRI、3Dマンモグラフィなどの症例に応じた併用が望ましい。検診を受けながらも発見が遅れた残り2割の方を救うには、このようにきめの細かい検診の個別化が必要です。
これから発見されるがん遺伝子の種類によって検診の方法を変えていくことが必要になり、検診が個別化する未来も遠くありません。医療が進歩すればするほど、一人ひとりにあった検診や治療で対応する、医療を個別化する専門性が必要になってきます。
「乳がん」は早期発見で90%近くの人が治せる病気です。他人ごととは思わずに、まずは検診に行くことから始めてください。未来を決めるのは現在です。私の述べた正しい検診の受け方に興味がある方はご相談ください。

「受診時現病歴による乳がんの進行度の比較」
2つの群間の比較(自己検診 1093名/ 検診発見 892名)では圧倒的な差があります。ステージ 0+1(ほぼ治癒することが望める早期がんである割合)は自己検診では44.8%に対し、検診発見された方では80.6%となります。
ご予約専用ダイヤル
079-283-6103