2026.02.07
当クリニックは検診を目的に来院される方が主になりますが、それでもさまざまな乳腺にまつわる主訴をもって飛び込んで来られる方がおられます。そしてその中で最も多い主訴が”乳腺の痛み”です。その訴え方は様々で、それこそ「痛い」から始まって、「ちくちくする」、「違和感がある」、「なんか張るような感じがする」、など総じて程度に差があります。
その際に、「痛み止めが必要ですか?」と尋ねると、「それほどではない」と言われる方がほとんどで、ではなぜ受診されたのですか? といえば、「やはりがんが気になったから」となるのです。
これに関しては、その痛みはいつからですか? どこが痛みますか? 生理周期と関係がありますか? 波がありますか? 今までに経験したことのない痛みですか? といった質問をしていくことで原因がはっきりしてきます。この流れは以前このブログで整理していますので、もしよかったら先にそちらを参考にしてみてください。
乳腺痛について・・・その1
乳腺痛について・・・その2
乳腺痛について・・・その3
重要なことは、乳がんではなかった際に、ではなぜ痛いのか、が漠然と残ってしまうことにあります。そうなれば、この先も何か痛みがあるたびに気になってしまうので、結局問題が何も解決しません。
また娘さんや、職場の後輩の女性に、聞かれた際にもなにも参考になることが答えられず、不本意な思いをします。たとえば「もしかして、何かピルとか、生理不順でお薬とか飲んでいる?」と聞けたなら。実は不妊治療や、生理不順で使われるお薬の中には、副作用として乳腺の張りとか痛みがあるものが多いのです。それを知っていれば一つヒントになりますよね。
よかったらぜひ上の1,2,3を参考にしてみてください。今、現在読み返してみても、よくまとまっていて、付け足すことがありません(自画自賛で恥ずかしいですが)。皆さんのような一般の方が読んでいく中である程度原因が絞り込めるように書いています。できれば医療機関を受診して、必ず医師の診断を仰いでほしいですが、そうするとしても知識はあって邪魔になりません。

そして 「乳がんは痛むのか」についてです。
これにこたえるには、先に示した 乳腺痛について・・・その2 が解答になります。
神経の細胞は、急激に引き延ばされることで痛みの信号を出し、脳にそれを伝えます。
妊娠されたときに、あれだけおなかが大きくなっても痛みが少ないのは10か月かけて徐々に引き延ばされているからです。でも出産の際に会陰部は48時間ほどで一気に引き延ばされます。当然激しい痛みを伴います。
これが がん の場合であっても同じことが起こります。
もともとがん細胞は周辺の神経も冒し、破壊していくので痛みは出にくい傾向にあります。しかしがんが及んでいなくても、周辺には網の目のように神経は通っているので、そちらが信号を出します。
早期がんも、進行がんも、それを構成する細胞の数こそ違いますが、分裂速度そのものに差はありません。1㎜が2㎜に倍になるのも、10㎜が20㎜に倍になるのも理論的には同じ時間で起こります。しかしがんのしこりが大きくなることによって、その周囲に存在し、引き延ばされる神経にとって、1mmが2mm、と 10mmが20mmの変化、そのどちらが”急激”に引き延ばされているか、については言うまでもありません。だから乳がんも進行して、大きくなってくれば痛みを感じるようになる、が正しい回答になります。
ではどれくらいの大きさになったら痛みを感じるのか
これについてもすぐに想像がつきます。
現在9人に一人の女性が乳がんに罹患され、残念ながら早期では発見されず、大変多くの方が毎年亡くなっておられます。そこからわかることは少なくとも、十分に治癒できる早期の状態の乳がんでは痛みはない、だから気が付かない、ということが簡単に想像できるのです。
乳がんを早期で見つけるためには、痛みなどの自覚症状は全く参考にできない、のです。
乳がんが痛いかどうか、を気にされておられる方は、やはり痛みを参考にしてがんを発見しようとされていることは間違いないでしょう。でもおそらくそれががんによる痛みであるならば、自分で触って異変に気付く、固い、しこっている、しこりがあるなど、つまりがんの存在に気付くと思います。痛んでいるのなら、まず進行がんだからです。
痛くても、痛くなくても、常に、定期的に乳腺の状態を自分でチェックし、先月と変化しているところがないか、に注意を払っておくことが重要です。
痛みを無視しろ、と言っているのではありません。痛みをがんと結びつけて考えることはよくない、と言っているのです。痛みがあるからがんを調べる、のが間違いではありません。でも痛みがないからがんを調べない、のは間違いです。またがんでなければ痛みは調べない、もまた間違いです。他の重要な原因が隠れているかもしれないからです。
ややこしくなりましたね。
痛みの大原則ですが、もしがんで痛んでいるのなら、それは少しずつ悪くなっていきます。何にも治療せずに回復することは原則ありません。生理の周期と一致していたり、一過性にあったけれど、次第に回復してくるようなら、まずがんは関係ないでしょう。がんは治療することなしに自然に回復することはないからです。
そしてもし次第に増悪してくる痛みであるのなら、それはもしがんではない、と診断されても放置していてはいけません。他の病気の関与を疑って、たとえば総合内科、たとえば整形外科を受診するべきです。
下記に同じく乳腺痛について、動画にしました。よかったら見てください。

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