乳腺と向き合う日々に

2026年02月

早期乳がんを切らずに治す ~ラジオ波による焼却療法~

ラジオ波焼却療法は、肝臓がんではかなりの歴史があり、もちろん保険適応の標準治療としてすでに確立した治療方法になります。

これは簡単に言えば、腫瘍の中心部にラジオ波を放射できる先を持つ針を刺し、そこから発せられるラジオ波(簡単に言えばそとにラジオ波を放射できる電子レンジです)で、腫瘍を完全に焼いてしまおうという治療法です。この場合、検査で分かっている腫瘍よりもより広い範囲を焼くことで、周辺を含めてがん細胞を完全に焼き切ってしまうことを目的としています。

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針の先の一部分からラジオ波が照射されます。それによって発熱が起こり、その周辺が球状に焼かれます。

肝臓がんを担当されている先生であれば施行したことがない方はおられないくらい一般的に広く行われている手技であり、安全性も危険性もほぼ確立されています。

それを乳がんに適応するものです。

上の図を見られればわかりますが、だいたい球状に焼けるので、その範囲内から逸脱する範囲にがんが及ぶ可能性があれば適応できません。したがってどうしても大きさの制限があります。

また切らないので、皮膚に傷は残りませんが、わずかにやけどを負う可能性はあります。また焼かれた腫瘍はそのまま固い瘢痕、つまりやけど後のケロイドとして残ります。がん細胞は死んでいるはずなのに、しこりは手術前から変わらずにそこにある、と感じられる患者さんがほとんどです。

ラジオ波による乳がんの治療は、日本を中心にして臨床試験が行われました。

肝臓がんでは確立した手技ではあるものの、果たして乳がんにそれを適応しても安全か? なにより乳がんはキチンとなおるのか? もともと手術で完全に治すことができるとされる早期の小さな乳がんが適応とされたため、その成績が手術に劣ることは許されません。

そして日本で厳密に行われてきたRAFAELO/PO‑RAFAELOなどの臨床試験および適応検討の記載から、早期乳がんのラジオ波治療はついに保険に収載されることとなりました。

その意味で私自身も早期乳がんは切らずに治せる、と確信はしていますが、実際にラジオ波治療の対象とされている条件はかなり明確かつ、厳密に規定されています。

先にラジオ波治療の適応とされる早期乳がんの定義を示します。

「画像・病理で確認された径1.5–2 cm以下の単発乳管癌(Stage 0–I, cN0)、EICや多発/多中心病変なし、術後に乳房照射と必要な全身療法を行うことを前提に、RFA単独で腫瘍を局所制御しうる症例」

これでは難しいので、下記に列記します。

腫瘍側の条件

早期乳がん(Stage 0–I)

TisN0M0, T1N0M0, T1N1miM0 が対象

腫瘍径が小さいこと(最大径 1.5–2.0 cm 以下 を条件としている。RAFAELO第III相試験では単発腫瘍で最大径1.5 cm以下を適格条件と明記 されている)

単発・限局性病変(単発の局在腫瘍(solitary localized tumor)であること)

組織型

乳管癌(ductal carcinoma) であること

びまん性石灰化や広範囲乳管内進展(EIC)を伴う症例は除外されている

画像上、境界明瞭で多発・多中心性の所見がないこと(乳腺超音波検査やMRIで辺縁明瞭、multifocal/multicentricを認めない早期病変が前提である)

リンパ節・遠隔転移

画像診断上臨床的N0(一部のプロトコールでは、センチネルリンパ節生検で微小転移(N1mi)までは許容しているが、マクロ転移は除外される)

遠隔転移(M1)は当然ながら適応外。

患者側・治療全体の条件

乳房温存手術+放射線が原則可能な全身状態(麻酔・照射に耐えうること)であること。ちなみにラジオ波治療後は、必要に応じて乳房への放射線治療、ER/HER2・リンパ節・グレードに応じた薬物療法(内分泌/化学/抗HER2)を併用することが前提とされている。

不完全焼灼や残存病変が疑われた場合には、部分切除へ移行できることを前提とする。

まとめ

2023年12月に、早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)が健康保険の適用対象として認められました。現状 保険診療でRFAを受けられるためには、以下のような基準があります。腫瘍サイズが 1.5 cm 以下の限局性早期乳がん(腋窩リンパ節転移・遠隔転移なし)であること。患者さん本人がその治療に適格であり、医師が適正と判断すること。日本乳癌学会の術者・実施施設認定を受けた医師・医療機関で行われること。

実際にこの治療は 標準治療(手術)と同等の長期成績が確立している段階ではありませんが、短期成績は初期手術と同等と認められて保険適用されました。

制限はあるものの、2024〜2025年現在、多くのがん専門病院や大学病院で保険診療として保険の範囲内で治療が実施可能になっています。

当院で早期発見された乳がんの患者さんで、ラジオ波治療の適応ですよ、と言える方がおられます。また実際に切らずに治療される方も出てきています。厳密には切らないだけで、焼いてはいますが、せっかく早期で発見されたのに切るのですか? と言われる患者さんに、切らないでも治す方法が取れますよ、といえる時代になったと言えると思います。

2026.02.06

乳腺の自己チェックについて 動画で公開します

昨年 私のクリニックでは、「乳がん 自己チェックの始め方 母へ娘へ」という本を出しました。
これに合わせて、当クリニックの外来待合室では自己チェックの具体的な方法について、その内容を動画にし、常に流しています。そこではその際に使うビー玉も無償で提供しています。

ビー玉を使うのには大きな理由が3つあります。

1 使っているビー玉は1.7㎝です。乳がんは発見された際の病理学的なサイズ、つまり切除して顕微鏡で観察し、そのがんが及んでいる範囲が2㎝を超えていた場合、進行がんであると診断されます。早期発見であるためには何としても2㎝以内でなければなりません。ちなみに2㎝ぎりぎりで見つけても、それから受診し、検査し、手術にするまでの期間があるので、どうしても余裕を見る必要があります。ですので1.7cmなのです。
 自己チェックで乳がんを早期発見するには、そのサイズを頭の中で理屈で分かっているだけではなく、具体的に自己チェックを行う手の”触覚”で知っておく必要があります。
 ビー玉を乳腺に押し当てて、イメージトレーニングすることでそのことに対する感覚を覚えておく必要があります。

2 ビー玉を常に例えばお風呂場、たとえば鏡台など、目につくところにおいておけば、自己チェックを思い出しやすい。習慣になればもう忘れないですが、始めたばかりの際にはつい忘れてしまいます。お風呂の石鹸置き場など、どうしても目につくところにおいておけば忘れにくくなります。

3 お風呂場や洗面所など、鏡があって、家族全員が使う場所においておけば、たとえば娘さん、たとえばお母さん、など、自己チェックが必要なみんなにそれを伝え、思い出してもらうきっかけになることができます。

 このビー玉を使って乳腺の自己チェックを始め、続けていく、というところが私のアイデアであり、この本の要点です。

 この本にはビー玉が付録しています。

 このように 私の勧める 自己チェックの始め方では、どうしてもビー玉が鍵になるため、そのやりかたの動画は作成したものの、このブログで公開することは今までしていませんでした。わざわざそのサイズのビー玉を探して購入する人手間が必要になれば、とにかく気楽に、そして正しく始めてほしい私の考えとすこしずれてしまうからです。また直接お会いしたことのない方に、これを勧めて本当に正しく伝わるだろうか、という疑問もありました。

 それでもこれを読んでおられる方にも是非 乳腺の自己チェックを始めてほしい そういった強い気持ちはあります。

 そこで今年の1回目のブログとして、この動画を公開します。下のQRコードを読み取っていただければご覧になることができます。一応このQRコードを見た方のみの限定公開になります。一般公開は今はしていないので、ご了承ください。

 よろしければブログだけで私をご存じの方も、ぜひこれをご覧になり、正しいサイズ(1.7㎝)のビー玉をお求めになって、自己チェックを始めてください。

 そしてもし、乳がんに罹患され、苦しい思いをされ、また今もされておられる方がおられましたら、自分の経験も踏まえて、周囲の大切な女性に自己チェックを勧めてあげてください。

 普段から乳がんに関心を持っておられない一般女性に、いきなりマンモグラフィによる乳がん検診を受診するよう勧めることはかなり高いハードルになります。また40歳以下のクーポン検診の対象にはなっておられない、しかし乳がんにならないとは決して言えない若い娘さんをお持ちの方もおられるでしょう。そういった方にはまずは自己チェックを勧めてください。

 歯磨きをきちんとされている女性は、やはりきちんと定期的に歯科受診をする傾向があります。

 普段歯磨きもしない女性に(そんな女性はいませんが)、いきなり歯医者に行けと言ってもそれは難しい。だからまず自己チェックから勧めて、始めてもらうのです。

 よかったらご検討ください。

このQRコードに入っているアドレスをご存じの方だけがみられる限定公開になっています。

2026年2月現在、一般公開はしていません。

ご了承ください。