2025.10.16
乳がん術後 ホルモン剤としてアロマターゼ阻害剤(アリミデックス🄬 アロマシン🄬 フェマーラ🄬)を使用している方では、この薬のエストロゲンを抑える作用のために、どうしても避けられない副作用として骨粗しょう症があります。骨粗しょう症の予防は「骨折してから」では遅い、という考え方からお薬を使われている場合も多いと思います。(よく誤解されますが、タモキシフェンは、女性ホルモンの乳腺に対する作用は押さえますが、骨と子宮に対する作用はむしろ増幅するので、骨粗しょう症はむしろ予防的に働きます。)
アメリカ・ニューメキシコ大学のE.マイケル・ルイエッキ医師はこう話します。
「現在の多くのガイドラインでは、骨折リスクが低い人には生活習慣の改善を、高い人には骨吸収を抑える薬を、そして非常に高い人には骨を作る薬を使うという考え方です。しかし、骨密度(Tスコア)が−2.5より上で、まだ骨折していない女性でも、薬による予防を検討してよい場合があります。」
ちなみにTスコアとはTスコアとは、あなたの骨密度が「健康な若い成人(おおむね20〜30歳女性)」の平均値と比べてどのくらい低いかを示す数値です。つまり、若いころの平均的な骨の強さを基準に、どのくらい骨が弱くなっているかを表しています。参考までに計算方法を示しますが、病院で骨塩定量を調べてもらった際に計算してもらうのが簡単です。
Tスコア =(あなたの骨密度 − 若年成人の平均骨密度) ÷ 若年成人の標準偏差(SD)
0 … 若い成人と同じ骨密度
−1 … やや減っている(約10〜12%骨密度が低下)
−2.5 … 約25〜30%ほど骨密度が減少している → このあたりから、骨折リスクが急激に上昇します。
閉経期の女性では、ホルモンの変化で骨の密度が急激に低下しやすくなります。骨が弱くなり、内部の構造が壊れると、元に戻すことは難しくなるため、早い段階での予防が重要です。つまり骨粗しょう症は進むと巻き戻しをすることは基本的はできない。つまり一方通行なのです。
ニュージーランド・オークランド大学のイアン・リード医師とアメリカ・オレゴン骨粗しょう症センターのマイケル・マックラング医師は、「単に骨密度(Tスコア)だけで治療を決めるのではなく、年齢・骨折歴・人種などを含めた全体的なリスクで判断すべきだ」と述べています。
骨密度が−2.5以下なら骨粗しょう症ですが、−2.5から−1.0の間は「骨量減少(オステオペニア)」と呼ばれます。この範囲の人は個人差が大きく、骨折リスクはさまざまです。実際には、骨粗しょう症と診断されている方よりも、骨量減少の範囲に収まる方が人数が圧倒的に多いため、骨折の大部分はこの群で起きています。
多くの骨粗しょう症治療薬は、骨粗しょう症の「予防」にも承認されています。
閉経後の女性で、ほてりなどの更年期症状がある場合は、ホルモン補充療法(エストロゲンなど)が予防に有効とされます。
ただし、エストロゲンは乳がんの発症や再発リスクを高める可能性があるため、乳がん既往者や高リスクの方には注意が必要です。アメリカ臨床内分泌学会(AACE)のガイドラインでも、「骨粗しょう症以外に適応がない場合は、エストロゲン以外の薬を優先すべき」とされています。
代表的なビスホスホネート系薬剤には、アレンドロネート・リセドロネート・イバンドロネート・ゾレドロン酸(ゾレドロネート)*などがあります。これらは骨の分解を抑え、骨折を防ぐ薬です。
ゾレドロン酸は特に人気があり、年1回または5年に1回と投与間隔が長く、効果が5年以上続くことが分かっています。(ただわが国ではゾレドロン酸は骨粗しょう症に保険適応がありません。○悪性腫瘍による高カルシウム血症 ○多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変が適応です)
ただし、ビスホスホネートにはまれに「あごの骨が壊死する」重大な副作用(顎骨壊死)が報告されています。歯の抜歯や感染がきっかけで起こることがあるため、治療前には歯科のチェックが推奨されます。
また食道アカラジアによって胃炎や食道炎が起こったり、背部痛、筋肉痛、関節痛、骨痛などの副作用もあります。
閉経直後で更年期症状がある女性ではホルモン療法が向くこともありますが、乳がんが心配な人やホルモン治療が合わない人では、ビスホスホネート系薬が第一選択となります。
骨折リスクがそれほど高くない人では、服薬による利益が小さく、副作用や費用を考慮して「薬を使わない選択」も妥当です。治療を受けるかどうかは、患者本人の意向を尊重して決めるのが理想です。
骨を「作る」タイプの薬(テリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブ)は、骨折リスクが非常に高い人に使われます。これらは治療目的でのみ承認されており、予防目的では使われていません。
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