クリニックの実績

クリニックの成績

2024年 総括

平成22(2010)年5月1日開院してから、令和7(2025)年1月現在までで15年が経ちました。現時点で当院のIDは51,000番台に到達しており、約5万人の方が当院を利用されたことになります。開業当初は西原一人でやっておりましたが、2021年からは私、渡辺が加わり、日によっては2名の女性医師が診療をしているため、合計4診で診ている曜日もあります。平均すれば1日に150から200名の方が、定期検診や何らかの主訴をもって当クリニックを受診してくださっています。

このページの更新は平成30年で少しの間止まっていましたので、2024年のデータから可能な限り毎年公開更新することとしました。

受診される方すべてに所見があるわけではありません。そのほとんどの方は所見なし、正常として帰宅されます。
ただ残念ながら何らかの異常を指摘され、精査を行うことになった方は2024年は584名おられました。
精査を必要とされた方とは、マンモグラフィ、乳腺超音波検査などで異常を指摘され、その部位から細胞、あるいは組織を採取してがん細胞が含まれていないか、病理検査に回された症例になります。そしてそのうち192名(32.9%)が実際に乳がんと診断されています。
乳がんとされた方の平均年齢は平均59.3歳(最年少29.8歳 最高齢86.3歳)でした。

プレゼンテーション1

図で示したように、精査が必要であるとされても実際に最終的にがんである、と診断される症例は1/3程度であることがわかります。
その次に多いのは線維腺腫になっています。線維腺腫は良性の疾患で、そうであると確定してしまえば切除は必要ではなく、放置で問題ありません。のう胞もまた良性疾患で、放置で問題ありません。
乳管内乳頭腫は、いわば大腸でいうポリープで、将来どのように扱っていくか、話し合いが必要ですが、原則として良性疾患ですので、当面経過観察で問題ありません。これに関しては、ブログの方で詳細に触れていますのでご参照いただければ幸いです。

どういった主訴をきっかけに乳がんが発見されているか

当院を受診されるきっかけは様々です。

ほとんどの方は定期的な検診が目的に来院されていますが、たとえば他施設で検診を受けて異常有りとされた方も精査に来られます。また痛みや違和感を主訴に来られる方は非常に多くおられます。自分で乳腺のしこりに気づかれてこられる方もおられます。

乳がんと診断された方の主訴を内訳ごとにグラフにしてみました。

主訴

定期健診と書かれた、定期的に当院を受診されている方で乳がんが見つかった方は全体の28%でした。また他施設で定期的に検診されていて見つかった方はマンモグラフィで発見された方が9%、乳腺超音波検査で4%ですので、結果として検診で乳がんが発見された方は41%という計算になります。

そして重要なことですが、乳がんの大部分は自分で気づかれた”しこり”を主訴に発見されています(46%)

痛みや違和感など、症状があって気づかれた方は9%前後に過ぎません。

残念ながら当院のデータからは、乳がんの半分以上は”自分で”発見されているのであり、検診で発見されているのではありません。
乳がんが全員検診で発見されることが理想ではありますが、検診は毎日、毎月受けられるわけではありませんので、必ず一部分はご自身で発見されることになります。問題はがんがどのような形で発見されるとしても、それが早期発見でなければならないということです。
自己発見ではどうしても早期発見が難しくなることが予想されます。ただ現状半分以上の乳がんがご自身で発見されている以上は、できればそれが早期発見になるように、正しい方法で自己チェックを行っておく必要があります。

発見動機による 乳がんのサイズの違い

繰り返しますが、我々の使命は乳がんを早期発見することです。
検診には乳がんの予防効果はありません。何回検診をしたからと言って乳がんになりにくくなる、ということはありません。

もちろん検診を受けられる皆さんの目的もしたがって乳がんを早期発見することにあります。

早期がんとは、がん細胞が原発臓器、この場合は乳腺ですが、そこから出て、転移を起こしている可能性が非常に低い段階を指します。がん細胞がその臓器にとどまっている限り、乳腺はすべて切除することも可能な臓器ですから、切除によって治癒が望めます。逆に乳腺の外に出ていってしまえば乳腺を切除してもがん細胞を0に根絶することは難しくなります。
乳がんの場合は簡単に言い切ってしまえば2cm以内に発見すること、それが早期発見であるといえる最低条件です。もちろん2cm以下であっても実は進行がんはあり得ます。しかし逆に2cmを超える浸潤がんであれば早期がんはあり得ないのです。絶対に2cm以下を満たすように見つけたい、それが検診の目的です。

自己チェックで見つけても構いません。検診で見つけても構いません。見つける方法はなんだっていいのです。何としても2cmになるまでに見つける、それをまず目標として理解していただく必要があります。毎年人間ドックを受けられている。2年おきにクーポン検診を受けている。毎日自己チェックを欠かさない。さまざまな女性がおられるでしょう。しかし乳がんが見つかった時、2cmを超えて見つかってしまえばそれまでどんなふうに検診をしていたか、努力していたか、は全く関係なくなってしまうのです。
たとえば、入浴時に何の気なしに触っていたら硬いような気がした。乳がん検診なんか受けたことはない。念のため、行ってみよう。
びっくり乳がんだった。1cmといわれた。早期がんだった。その場合は検診はしたことがなくても、検診で見つかったものではなくても助かる可能性は高いです。
毎年ドックを受けている。入浴していたら何か硬いように思う。でもまあドックをしているし大丈夫だろう。どんどん固くなるように思う。今年のドックの時機が来た。受けたら乳がんと言われた。3cmある、といわれた。進行がんと診断された。
この話はどこかで聞いたことがありますね。きちんと努力されていても危険な状況です。

内訳3

上記のグラフは、当院にどのようにして来られていたか、検診をどういったペースで受けていたか、と乳がんが発見された際のサイズ(乳腺超音波検査でのサイズを採用しています)を示したものです。

残念ながら自分で腫瘤を発見してこられた方では平均サイズで2cmを超えてしまっていました(22.8mm)。
発見された時点でほぼ進行がんであったということになります。

当院を定期的に受診している方では平均で11.6mmです。
ただ残念ながら40mmを超えて見つかった方もおられました。2名おられましたが、両方とも前回受診から1年6か月間が空いてしまった方でした。ただ当院を6か月ごとに受診されていても、見つかった時に20mmを超え、進行がんであった方がおられたのも驚きです。

別の言い方をすれば、たとえ半年おきに施設を受診し、検査を受けられたとしても、見つかった時には残念ながら進行がんだった、という進行の早い乳がんはあり得ます。だからといって全員が3か月ごとに検診を受けることもまず無理でしょう。定期的に受診されていても、常に自己チェックを心がけていただきたい理由がここにあります。非常に進行の早い乳がんも存在するのです。自己チェックで乳がんを発見された方の中には5mmで見つけられた方もおられます。自己発見ではかならず進行がんとは限りません。早期発見できている方も事実としておられるのです。

検診を受けているからと言って、自己チェックしない。私はそれは、歯磨きをせずに歯科医に全てお任せして虫歯を予防するようなものだ、とお話しています。
虫歯の予防はどこまでいっても普段の歯磨きこそが最も重要です。歯医者に行くことだけで予防はできません。
乳がんの検診もまた然り。まずは基本として日常の生活の中で乳腺の自己チェックをしておく
そしてその日常の中でたとえば遺伝の有無、たとえば女性ホルモンの治療を受けている、乳腺になんらかの症状があるなどの状況などに応じて検診を組み立てる。また会社から補助がある、市町村から定期便がやってくるのでそれを利用する、などを加味しながら臨機応変に施設を受診して検診をうけていく、これが基本的な姿勢になります。

今後の進むべき道

乳がんの治療は日進月歩で進化しています。しかし我が国の人口当たりの乳がんによる死亡率は減少に転じていません。これについては今年の年初からブログで触れています。
いくら治療が進歩しても、乳がんの罹患率が上昇し、そして早期発見の割合が変わらなければ結局亡くなる方を減らすことはできません。乳がんの手術がなくなり、完全に薬で治すことができる時代が来るまで、がんをできるだけ早期で見つける、転移をきたす前に見つけることができなければ死亡率は下がりません。

姫路市の施策が変更され、無料クーポンの配布の対象者が5歳刻みから2歳刻みと2.5倍に拡大された後、姫路市内の乳がん検診受診者は大幅に増加しました。しかし、この数年検診受診率の増加は定常化している現状もあります。その上、遺伝子診断(HBOC:遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)診療の拡充も足踏み状態も見られます。乳がん死亡率の減少につながる道の拡大が見えていません。乳腺クリニックが果たすべき役割が、益々大きくなっています。

未だ多くの乳がん患者さんが進行がんで診断されているのが現実です。

乳腺の検査、検診目的の受診が身近でなければどうしても二の足を踏んでしまいます。まず一度でも受診されていれば、どこに行けばいいか、ご自身がわかっており、そして何を検査されるか経験があれば、ご自身の乳腺に少しでも異常を感じたとき、発見したとき、ためらうことなく即時精査を受ける気持ちになられるようになります。

  1. 一般の女性が乳房の違和感などによる不安があれば、乳腺クリニックを即時ためらいなく受診する光景を創り出すために、我々医療従事者がその場を提供する努力すること。
  2. マンモグラフィ及び乳房超音波検査を精巧に駆使した針生検を行って、病理組織診断が難しい症例を数多く検出することにより、日々がん拠点病院の乳腺外科の先生方と切磋琢磨すること。
  3. マンモグラフィ検診の受診者増加に応需できる体制を整えること。
  4. HBOC診療で、乳癌関連遺伝子である遺伝子変異を指摘された方への、NCCNガイドラインに準拠したフォローアップのシステムを構築すること。

そして、乳癌治療に日々邁進されている乳腺外科の先生方の努力に報いるために、最初の医療機関である乳腺クリニックの医療従事者は、罹患を避けることのできない乳がん患者さんを、早期の段階で発見し、治療現場に余裕をもって送り出す使命を帯びています。